Simple Application Server(SAS)とは?
アリババクラウドの Simple Application Server(以下 SAS)は、
いわゆる「VPS(仮想専用サーバー)」の操作を簡単にしたサービスです。
- WordPress などがプリインストールされたイメージを選ぶだけでサーバー構築が完了
- スナップショットやバックアップ機能が標準で用意されている
- 個人開発〜中小規模サイトにちょうど良いスペック感
「レンタルサーバーより自由度が欲しいけど、ガチなクラウド構築は面倒」という人に向いているサービスです。
WordPress 用にどの OS / イメージを選ぶべきか
SAS では、サーバー作成時に以下のようなイメージを選べます。
- WordPress プリインストールイメージ
- LAMP / LEMP スタック(Linux + Apache/Nginx + PHP + MySQL)
- 素の Linux(Ubuntu / AlmaLinux など)
迷ったら「WordPress イメージ」か「LAMP イメージ」
サーバーにあまり慣れていない場合は、
WordPress プリインストールイメージが最も手軽です。
ある程度 Linux に慣れていて、
「自分で PHP のバージョンや設定を細かく管理したい」という場合は
LAMP/LEMP イメージを選び、
手動で WordPress をインストールする構成もおすすめです。
OS 選びのポイント
- 長期サポート(LTS)が提供されている OS を選ぶ
- ネット上の情報量が多い OS(Ubuntu など)はトラブルシューティングが楽
- 既に他案件で使っている OS に揃えると運用コストが下がる
スペック選び:どのくらいのプランが妥当?
一般的な中小規模のコーポレートサイトやブログであれば、
例えば次のようなプランからスタートすれば十分です。
- vCPU:1〜2コア
- メモリ:1〜2GB
- ディスク:40〜60GB 以上
- 帯域幅:1〜3Mbps 程度(アクセスが増えたら見直す)
トラフィックが増えてきたら、
プランを一段階上げる・CDN を併用するなど段階的に強化していくのが現実的です。
セキュリティまわりの注意点
1. ポートとファイアウォールの設定
SAS では、サーバー側のファイアウォール設定と、
アリババクラウド側のセキュリティグループ設定の両方を確認する必要があります。
- 80番(HTTP)と443番(HTTPS)は一般公開
- 22番(SSH)は「自分のIPのみ許可」などに絞ると安全
- 不要なポートは閉じておく
2. SSH ログインまわり
- パスワードログインではなく、できれば SSH 鍵認証にする
- root 直ログインを避け、一般ユーザー + sudo で運用する
- Fail2ban などのツールで不正ログインをブロックするのも有効
3. ウイルス・マルウェア対策
SAS 自体にはいわゆる「レンタルサーバーのようなウイルススキャン」は基本的にありません。
必要に応じて以下のような対策を検討します。
- WordPress 側でセキュリティプラグイン(例:Wordfence など)を導入
- Web アプリケーションファイアウォール(WAF)を使う
- Cloudflare など外部サービスでレイヤー7の防御を追加する
バックアップとスナップショット運用
WordPress を安全に運用するうえで、バックアップは必須です。
SAS ではスナップショット機能が提供されているため、以下のような構成がおすすめです。
- サーバー全体:SAS のスナップショットを定期取得
- サイト単位:WordPress プラグイン(UpdraftPlus 等)で S3 互換ストレージにバックアップ
「大きなアップデートやプラグイン追加の前にスナップショットを1つ切っておく」
という運用にしておくと、何かあってもすぐロールバックできます。
中国向け配信を考える場合のポイント
SAS は海外リージョンと中国本土リージョンの両方があります。
中国向けの表示速度を重視するなら、リージョン選びと ICP まわりの理解が重要です。
- 中国本土リージョン + ICP備案 + CDN → 高速だが手続きが多い
- 香港 / シンガポールなど + 国際回線 → 手続きは楽だが、速度はそこそこ
「とりあえず中国からも見えるようにしたい」という段階なら、
まずは香港・シンガポールリージョン + CDN から始め、
本格的に中国マーケットを狙う段階で ICP や本土リージョンを検討する流れが多いです。
まとめ:SAS は「ちょっと本気の WordPress」にちょうど良い
アリババクラウドの Simple Application Server は、
レンタルサーバー以上・ガチクラウド未満というポジションで、
個人開発者や中小企業の WordPress サイトにとても相性の良いサービスです。
OS やイメージ選び、セキュリティ、バックアップ、リージョンの考え方を押さえておけば、
「安いのにしっかりした運用」が可能になります。
すでに別環境で WordPress を動かしている人も、
次の案件や中国向けサイト用に SAS を検討してみる価値は十分あります。

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